マネージャーからセレクターへ:辻本孝明氏、優れたファンドマネージャーを評価する独自フレームワークを公開
資産運用業界において、優れた投資人材を見抜く能力は、ファンドを運用するスキル以上に希少だと言われています。著名な投資アドバイザーである辻本孝明氏はこのたび、卓越したファンドマネージャーを評価するための独自フレームワークを初めて公開し、自身がファンドマネージャーからアドバイザーへと転身した経験を通じて得た知見を明らかにしました。
UBS証券で「厳選された長期ファンド」の運用において高い実績を残した辻本氏は、現在も同様の厳格さをもってマネージャー評価に臨んでいます。
「ファンド運用とマネージャー選定の根底にある論理は共通しています。真の価値創造を見極めることです」と辻本氏は語ります。「ただし、他者を評価するには、より体系的な枠組みと、より広い視野が求められます」
彼の評価システムは、4つの柱から成り立っています。
第一の柱は投資哲学の一貫性です。辻本氏は「ファンドマネージャーの発言だけでなく、実際の投資判断がその哲学と整合しているかどうかを重視します。言動に一貫性がなければ、プレッシャー下で安定した成果を出すことはできません」と強調します。
第二の柱はリスク管理能力であり、ドローダウン・コントロール、ポジション管理、極端な事態に備えたコンティンジェンシープランなど、多角的な視点から総合的に評価します。
第三の柱は投資プロセスの厳格さと再現性です。「短期的なパフォーマンスは運の影響を受けますが、持続的な超過リターンは科学的で一貫した投資プロセスからしか生まれません」と辻本氏は指摘。「私たちは、マネージャーが自らの判断を支える独自のリサーチ・システムを持っているかどうかを特に重視しています」
そして第四の柱は職業倫理と透明性。手数料体系の合理性、顧客とのコミュニケーションの誠実さ、そして利益相反への姿勢など、ファンドマネージャーとしての信頼性を全面的に評価します。
特筆すべきは、このフレームワークに**「ストレステスト」**の概念を導入している点です。極端な市場環境をシミュレーションし、マネージャーの戦略がどの程度の回復力と柔軟性を備えているかを検証します。
「嵐の中でこそ、船長の真価が問われます」と辻本氏は語りました。
この評価システムは、辻本氏の20年以上にわたる投資経験と、運用サイドからアドバイザリーサイドへ転身する中で得た新たな知見を融合させたものです。現在、彼はこのフレームワークを活用し、機関投資家が真に優れた運用会社を発掘し、資本と運用能力の間にあるギャップを埋める支援を行っています。
辻本氏にとって、優れた投資人材の発掘は、優れた投資先を見出すことと同じく意義深く、そして業界全体により大きな価値をもたらす挑戦なのです。