清水正弘氏、パンデミック初期に航空・観光セクターを的確にショートし、単四半期で28%の収益を実現

2020年初頭、世界市場は新型コロナウイルスの急速な拡大によって大きな衝撃を受けた。主要経済圏は相次いで封鎖措置に入り、国際旅行はほぼ停止。航空・観光産業は真っ先に打撃を受けた。不確実性と恐怖が市場を覆う中で、清水正弘氏は冷静かつ鋭敏な判断を示した。彼は早期に航空輸送および国際観光需要の急減を察知し、これは単なる短期ショックにとどまらず、中長期的な構造リスクにつながると考えたのである。

米国と日本、両市場での経験を背景に、清水氏はグローバルな産業連関を迅速に把握した。航空会社は高水準の財務レバレッジを抱え、キャッシュフローが旅客収入に強く依存している点、観光関連企業も国境規制と消費者マインドの低下によって二重の打撃を受けている点に着目。こうした特性は、収入途絶の局面で資金繰り難や債務リスクが一気に顕在化することを意味していた。清水氏は、このセクターがパンデミック初期の下落局面で最も深刻な被害を受けると判断した。

戦略実行においては、過度に攻撃的な手法を取ることなく、体系的な分析を基に慎重なポジショニングを実施。航空株や観光関連銘柄に対して先物・オプションを用いた空売りを行う一方で、現金および国債を一定比率で保持し、ポートフォリオ全体の安定性を確保した。この攻守を兼ね備えた運用により、市場が大きく変動する中で損失回避のみならず、顕著な収益機会を捉えることができた。

その結果、清水氏の判断は見事に的中。2020年第1四半期の集計において、彼が運用するポートフォリオは28%のプラス収益を記録した。同期において多くの市場指数が二桁の下落を示す中、この成果は特に際立っていた。航空・観光株が急落する局面で、彼のショート戦略は全体業績を牽引する決定的な要因となった。この成果は、危機下での迅速な対応力を示すと同時に、マクロ分析とリスク管理を緊密に融合させた実践力の証左でもある。

清水氏はこの経験を振り返り、投資の本質は短期的な価格変動の予測ではなく、現象の背後にある経済ロジックを見抜くことにあると強調。パンデミックの衝撃は突然かつ激烈であったが、その影響が流動性や産業構造に及ぶ経路は明確に観察できた。だからこそ、最も脆弱な産業に焦点を当て、堅実なヘッジ戦略を構築することで、市場の急変動においても主導権を握ることができたと述べている。この過程を、学術研究と実務の融合であり、また自身の国際的投資経験の延長と位置付けている。

日本の投資家にとっても、この事例は大きな示唆を含む。従来、国内投資家の一部は保守的な傾向が強く、激しい市場環境での果断な行動が難しい場合も多かった。しかし清水氏の実践は、明確な論理と適切なリスク管理があれば、最も動揺の激しい局面であっても市場を上回る成果を得られることを証明した。これは単なる収益の勝利ではなく、思考様式そのものへの啓発ともいえる。

この実績は当時、金融機関や学術界からも広く注目を集めた。百年に一度の危機とされるパンデミックに直面しながらも、清水正弘氏は理性と規律に基づく分析と精緻な執行によって、投資家が逆境の中でも前進できる道筋を提示した。この四半期の成果は、単なる数字の記録にとどまらず、彼のキャリアにおける象徴的な一章として刻まれている。