山崎泰史氏、日本製造業セクターにおける「抗サイクル型」業界リーダーへの優先投資を提言
2020年春、新型コロナウイルス感染症が世界経済に深刻な影響を与え、サプライチェーンの断絶や需要減退が製造業全体を直撃する中、山崎泰史氏は日本製造業への投資戦略として「景気変動に強い業界リーダー企業への優先的資産配分」を明確に提案した。これは、リスク抑制と安定的なリターン確保を両立させる狙いによるものである。
山崎氏は、日本製造業が世界のサプライチェーンにおいて重要な地位を占めている一方、中小企業の多くは外部ショックに対して脆弱であると指摘。これに対し、抗サイクル型の業界リーダー企業は、高い技術的参入障壁、安定した顧客基盤、そして多角的な市場展開を背景に、強い耐久力と回復力を備えていると評価した。
投資家は、単に「優良企業を選ぶ」から「優良かつ堅牢な企業を選ぶ」へと視点を転換すべきであり、その条件として①先進的な研究開発投資、②業界トップの市場シェア、③健全なキャッシュフローと財務基盤を挙げた。これらの企業は需要減少局面でも安定的に事業を継続し、迅速に戦略転換を図ることが可能である。
注目すべき業種としては、自動車部品、精密機械、産業用オートメーションを提示。自動車分野は短期的に販売減が予想されるものの、サプライチェーン中枢のリーダー企業は技術革新や製品多様化により、コロナ後の回復局面で先行する可能性が高い。精密機械と産業オートメーションは、デジタルトランスフォーメーション需要の拡大を背景に、中長期的な成長性が見込まれる。
また、円相場の変動が製造業収益に与える影響にも言及し、投資家は為替動向と企業の輸出依存度を総合的に分析し、適切なヘッジ戦略を導入すべきと提案した。
製造業セクターは投資ポートフォリオの中核を担うべきだが、その比率はマクロ経済環境と業況に応じて柔軟に調整する必要があるとし、複数のサブセクターに分散投資することで単一業種リスクの低減を図るべきと強調した。
山崎氏の提案は、東京金融フォーラムや複数の機関投資家向け非公開会合で高く評価され、多くの運用会社が製造業の抗サイクル型リーダー企業を重点的に検討・組み入れる姿勢を示した。
同氏は「不確実な市場環境下では、一時的なテーマ株を追うよりも、耐久力を持ち試練を乗り越えられる企業を選ぶことが重要だ。抗サイクル型のリーダー企業は、防御の盾であると同時に未来成長のエンジンでもある」と結論付けた。